当院で治療できる主な疾患
1.腰椎椎間板ヘルニア
症状
腰痛・臀部痛・下肢痛・下肢のしびれや知覚障害・筋力低下・膀胱直腸障害
病態
腰椎は、5つの椎骨とその間の椎間板がつながって、少し前に湾曲してバランスをとっています。
この後ろに脊柱管という縦に長い、前後の広さが1.5〜2cm程度の、断面はやや三角形のトンネルがあり、ここに神経が通っています。
神経は、硬膜管という薄い膜の縦長の袋の中に髄液に浮かぶように馬尾神経があります。
この神経が椎間板のレベルで左右対称に神経根となって脊柱管の外に出ていって、その先が脚やお尻にまで達しています。
椎間板の構造は、二重構造になっており、中心にはゲル状の髄核があり、その周囲には線維輪が取り囲んでいます。線維輪の後には後縦靭帯という縦に長い靭帯があり、脊柱管との壁になっています。
腰椎椎間板ヘルニアは、髄核が線維輪を破り、はみ出した状態をいいます。
脊柱の構造上、髄核は後側に脱出しやすく、脱出した髄核が神経根に当たれば下肢痛を引き起こします。
ヘルニアの大きさや神経を圧迫する部位によって様々な症状を呈します。
頻度は多くはありませんが、馬尾神経全体を圧迫すれば、オシッコが出にくく、便秘になる、膀胱直腸障害という重篤な状態になることもあります。
当院での治療
椎間板ヘルニアは、大きく二種類に分けられます。
一つ目は髄核が線維輪を破り、さらに後縦靭帯も穿破して脊柱管内に髄核が出てくる「脱出型」。
このような場合、髄核は体内では異物となり、自身の貪食細胞によって排除され、ヘルニア塊が消失してしまうことがあります。
貪食される期間は人によって差がありますが、6ヶ月前後かかります。この間、疼痛を軽減する治療が主となります。
神経の周囲に麻酔剤やステロイド剤を注射するブロック療法や消炎鎮痛剤の投与、神経や周囲の組織の血流を改善し、炎症を和らげる物理療法が中心となります。
症状が強く日常生活に支障がある場合、麻痺の症状がある場合は手術適応となります。
二つ目のヘルニアが後縦靭帯を破っていない「非脱出型」。
髄核が異物として認識されないため、貪食されることはありません。ヘルニアの大きさは自然に小さくなることはありませんが、症状がそれ程強くなければ、必ずしも手術で取り除く必要はありません。
このふたつのタイプは、MRIである程度は鑑別できますが、症状の経過をみることも大切です。
当院では、腰椎牽引やアルファビーム(赤外線治療器)などによる物理療法や硬膜外ブロックを施行し、障害されている神経が判明すれば、神経根ブロックで神経周囲の炎症を抑え、神経の腫脹を和らげるような治療をいたします。
これらにより下肢痛を軽減させることができます。
2.腰部脊柱管狭窄症
症状
腰痛・下肢痛・下肢のしびれ・間欠性跛行・会陰部の違和感・異常勃起・膀胱直腸障害
病態
腰部脊柱管狭窄症は中年以降に起きる変性(加齢減少)によることが多い病気です。
しかし、元々神経の入った脊柱管が細い人もおり、このような人は変性所見の影響を受けやすい状態にあると言えます。
脊柱管の広さはCTやMRIで分かります。
脊柱管は、前方からは椎間板の膨隆や椎体後縁の骨棘形成など、後方からは黄色靭帯や椎間関節の肥厚により細く、狭くなります。
腰椎では脊柱管の中を馬尾神経が通っており、この神経が圧迫されることにより下肢痛やしびれ・歩行障害を起こします。
脊柱管狭窄症の特徴的な症状として、間欠性跛行があります。
これはしばらく歩いていると下肢痛やしびれが悪化して、しゃがんだり、座ったりしたくなる症状です。
脊柱管は体を前に曲げると広がり、後ろに反らすと狭くなります。
自転車に乗れば遠くに行けるが、歩くとすぐに休みたくなる人は、腰部脊柱管狭窄症の可能性が高いです。
当院での治療
圧迫された神経の炎症を抑え、神経周囲の血流を改善することにより症状を和らげることは保存的治療でも可能です。
消炎鎮痛剤や血流改善剤の投与と、硬膜外ブロック(局所麻酔剤の注入)や硬膜外ステロイド剤注入を同時に行うことにより下肢痛が軽減し、歩行距離が伸びることがあります。
MRIなどにより障害されている神経が判れば、選択的に神経根をブロックすることにより、我慢できない下肢痛を緩和することができます。
電気治療やアルファビーム(赤外線治療器)などの物理療法は体の深部を温め、血流改善に効果があります。
また、日常生活上の注意や姿勢による症状の悪化を防ぐための指導を行います。
保存的な治療をしても症状が軽減しない場合や、一度に歩ける距離が短く生活に支障がある場合、排尿障害があるなど重症例は、手術の必要がありますので、手術ができる病院を紹介させていただきます。
3.頚椎椎間板ヘルニア・頚椎症
症状
頚部痛・上肢痛・肩こり・上肢のしびれや知覚障害・上肢の筋力低下や筋萎縮・巧緻性障害・歩行障害・膀胱直腸障害
病態
腰椎と基本的な脊柱の構造は同じですが、頚椎には7個の椎骨があります。
第1・第2頚椎は形状が特異的で環椎・軸椎と呼ばれています。
椎体・椎間板の後には脊柱管があり、脊髄が縦に通っており、上肢に行く神経根の枝を出し、下肢に行く太い伝導路の役割をしています。
神経根は左右第8頚神経まであり、各々の支配する筋群や知覚領域が決まっています。
椎間板ヘルニアは突出した椎間板組織により、頚椎症は変性により生じた骨棘や靭帯の肥厚により神経を圧迫している状態であり、圧迫される部位により、脊髄症と神経根症に大きく分けられます。
脊髄症は手のしびれから始まることが多く、次第に手の巧緻性障害(箸が使いにくい・ボタン止めがしにくい等)、歩行障害(階段を降りるのがこわい、ぎこちない等)膀胱直腸障害にまで進行します。
神経根症は上肢の痛み・しびれから発症し、知覚鈍麻・筋力低下・筋萎縮に進行します。
当院での治療
手のしびれや上肢の痛みに対しては、保存療法が比較的有効です。
急性の疼痛に対しては、まず安静と鎮痛剤の投与で痛みの軽減をはかります。
効果がないときには、頚部硬膜外ブロックで著しい除痛効果が得られることがあります。
硬膜外ブロックは、レントゲン透視下に頚部後ろから神経の近くまで注射針を進め、局所麻酔剤やステロイド剤を注入する方法で、痛みの経路を遮断し、神経の炎症を抑える効果があります。
障害されている神経がはっきりしている場合は、頚部の神経根ブロックも施行しています。
亜急性または慢性化した上肢のしびれ・痛みに対しては、物理療法が有効です。
頚椎牽引や低周波治療は頚部痛の軽減に役立ちます。
赤外線治療器は星状神経節ブロックに似た効果を示し、障害領域の血流を改善し上肢の痛み・しびれを軽減することができます。
最近では、パソコンなどの作業のため頚椎の彎曲異常がみられる症例が多く、日常生活上の注意や体操の指導などを行っています。
脊髄症は、症状が軽度の場合は通院で保存療法を行います。
しかし、歩行障害・手指巧緻性障害などが出現し、日常生活に支障が出ている場合は、手術が必要になることがありますので、手術ができる脊椎外科医がいる病院を紹介させていただきます。
4.変形性膝関節症
症状
関節痛・関節の腫脹・可動域の制限・関節水腫・歩行障害
病態
長年にわたり膝関節に加重がかかることにより、関節軟骨が磨耗し、変性を起こすことにより痛みを起こします。
脱落した軟骨によって関節炎を起こし、関節の袋の内張りである滑膜の炎症が強くなれば関節液が貯留してきます。
軟骨の磨耗が進行すれば骨同士がこすれるようになり、膝を動かすたびにゴリゴリと音がしたり、動く範囲が狭くなったりします。
外傷や化膿性関節炎の後遺症として発症する二次性の関節症と、はっきりした原因なしに単なる老化現象として起きる一次性の関節症に分類されます。
一次性関節症の方が多く、肥満や膝周囲の筋力の弱化も関係しています。
当院での治療
まずは薬物療法として消炎鎮痛剤を投与します。
これは単に痛みをごまかすだけではなく、関節内の炎症を抑える役割が期待できます。
副作用が出ないかを診ながら、2週間から1ヶ月程度服用して効果を判定します。
痛みが強い場合は、ヒアルロン酸の関節注射をします。ヒアルロン酸は軟骨修復作用・抗炎症作用・潤滑作用があり週に1回、1〜2ヶ月続けて注射して効果を診ます。
マイクロ波や干渉吸収低周波など物理療法も、膝関節周囲の血流を改善し、ある程度の除痛効果が得られます。
また関節周囲の靭帯が緩んだり、変形が強い場合は装具療法を行います。
日本人では内反変形によるO脚になることが多いので、膝にかかる荷重線を、装具をつけることにより内側から外側に戻し、膝の内側の痛みを和らげることができます。
高齢になると膝周囲の筋力が低下して、膝関節にかかる負担が大きくなります。
運動療法を指導し、大腿四頭筋はハムストリングスを鍛え、関節の可動域を広げることにより、膝機能の改善を図ります。
いずれにせよ、傷ついた軟骨が元に戻ることは期待できないので、変形が進行し、日常生活が不自由になれば人工関節などの手術が必要になります。
患者さんやご家族とよく相談して、手術を希望された場合は、手術経験が豊富な病院を紹介させていただきます。
5.骨粗鬆症
症状
骨粗鬆症だけでは、自覚症状がありません。
しかし、骨折しやすい状態になります。背骨の圧迫骨折では、腰背部痛・背中が丸くなる・身長が低くなるなどの症状が出ます。
またちょっとした転倒で、手首や肩の骨が折れることがあります。
脚の付け根の骨折も起こしやすくなり、転倒により歩行困難になる場合があります。
高齢者が寝たきりになる原因の約1割が骨折などによるものです。
病態
高齢になったり、女性が閉経を迎えると、骨のカルシウム量が減少して、骨密度が低下して骨粗鬆症になります。
人の骨は20歳〜30歳で最も丈夫になり、その後弱くなっていきます。
老化により骨を作る細胞の働きが減り、逆に骨を壊す細胞が働くことにより骨粗鬆症が進行します。
女性ホルモンには骨を作る作用があり、特に女性は閉経後急に骨密度が低下します。
また高齢になりカルシウムの摂取が不足したり、腸管からのカルシウムの吸収が低下することも骨粗鬆症の原因になります。
運動不足も骨への刺激が少なくなり、骨の強さを低下させます。
骨粗鬆症になるとちょっとした外力で骨折を起こします。
特に骨折しやすいのは、脊椎・肩の骨・手関節・大腿骨頚部で、転倒が一番多い原因です。
当院での治療
まず骨粗鬆症の診断と程度を調べるために、当院ではX線を用いた骨密度測定をします。
また治療効果の判定のために、血中・尿中の骨吸収マーカーや、骨形成マーカーを検査しながら治療をすすめます。
骨粗鬆症の治療は薬物療法が中心です。
ビスフォスフォネート製剤やSERMと呼ばれる女性ホルモン製剤を投与することで、骨の吸収を抑え、骨の強度を回復し、骨折率を低下させることができます。
痛みが強い場合は、カルシトニン製剤を注射します。
乳製品や緑黄色野菜を食べることで、カルシウムを摂取するよう栄養指導を行い、運動の指導により骨の強さを増し、転倒の予防を図っています。
いわゆる「転倒しないようにする。転倒しても骨折しないようにする。骨折が原因で寝たきりにならにようにする。」を目標に治療していきます。
6.五十肩
症状
肩関節痛・夜間痛・運動時痛・可動域制限
病態
滑液包や腱板などの肩関節周囲の軟部組織に炎症によって、腱板疎部の癒着・肥厚が起こり、関節包の癒着・肥厚へと発展していった状態で、「腱板断裂」や「石灰沈着症」など病態がはっきり診断できたものは除外します。
五十肩という用語は、中年以降に起きる「退行変性による有痛性肩関節制動症」のことで、英語では「Frozen Shoulder」(凍結肩)と呼ばれます。
本人もあまり気づかない程度の、小さな外傷(重いものを持ったり、捻ったりする動作など)が誘因になることがあります。肩を他動的に動かした時に、痛みがあり、可動域の制限があり、さらに夜間痛があれば「五十肩」と診断してよいでしょう。
当院での治療
関節注射と運動療法、物理療法が中心になります。
肩が痛いので動かさない⇒関節周囲の癒着が起きる⇒関節の拘縮・炎症に発展する⇒痛みが強くなる
という悪循環を断ち切ることが治療上大切です。
肩関節や滑液包に局所麻酔剤とステロイド剤を注入することで、炎症を抑え、痛みを和らげることができます。痛みが軽減している間に動きをよくする運動をしていきます。少し痛みを感じても肩を動かすことが肝心です。
当院では、マイクロ波や赤外線治療器で肩関節周囲の組織を温めた後、上肢交互運動器によって可動域の拡大を図ります。
徐々に疼痛は軽減していきますが、治るまで半年ぐらいかかることがありますし、最終的に10〜20%の可動域制限が残ることがあります。
家庭でできる運動療法や生活上の注意を指導し、少しでも早く肩の痛み・夜間痛が軽減して、日常の動作がしやすくなるようにします。
7.関節リウマチ
症状
朝のこわばり・多発関節痛・関節変形・リウマチ結節など、全身症状としては、発熱・体重減少・貧血・リンパ節腫脹・疲れやすさなど
病態
自己免疫疾患といわれていますが、原因はまだ明らかではありません。
免疫システムの異常の結果が関節の滑膜に発生するため、関節痛が起きます。
関節炎の特徴として、多発性・対称性で移動性です。
有病率はおおよそ1%で、女性は男性の5〜8倍多く、40歳代ぐらいで発症することがあります。
経過としては、
・侵される関節の数が少なく単周期でよくなるタイプ
・多周期で良くなったり悪くなったりしながら軽快に向かうタイプと徐々に悪化するタイプ
・数は多くはないですが、治療してもどんどん悪化するタイプ
があります。
最近では滑膜内に炎症性サイトカインという物質が多く見つかり、これが炎症を引き起こし、骨・軟骨を破壊する本体と考えられています。
逆にこれらのサイトカインを抑えることにより、骨・軟骨の破壊を止めることができるということになります。
当院での治療
診断のためレントゲン検査と血液検査をします。
血液検査では、リウマトイド因子(RF)・炎症反応(CRP)や、最近では、骨軟骨の破壊の程度を知る血清メタロプロテアーゼ(MMP-3)などで病気の勢いも診断します。
薬物療法では、まず非ステロイド系抗炎症薬を投与して関節の腫脹・疼痛の軽減を図ります。
抗リウマチ薬は、免疫を調整する薬剤や免疫を抑制する薬剤を使用します。
活動性の高い時期には、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン薬)を投与します。
最近では、生物製剤(たとえばインフリキシマブ)を投与して、炎症性サイトカインを抑制し、骨・軟骨の破壊が進行しないようにしています。
物理療法では、マイクロ波や赤外線治療、ウォーターベッドなどにより局所・全身の循環を改善し、炎症や痛みを和らげるようにします。
また体操の指導により関節の拘縮を防ぎ、こわばりが起きないようにします。
日常生活の注意では、十分な睡眠をとり、疲れが溜まらないようにします。
関節に余分な負担がかからないように、日常生活上の工夫を指導します。
関節の変形や破壊が強くなり、手術療法が必要になれば、リウマチ専門医がいる病院を紹介させていただきます。